6500万年を翔けた夢とアドベンチャーの終着点『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』ネタバレ感想・考察

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恐竜
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はじめに

少し、自分の話をさせてほしい。

1991年に生まれた僕は、同年代の例にもれず、年相応に戦隊モノが大好きな子供だった。

中でもお気に入りだったのが『恐竜戦隊ジュウレンジャー』だ。ゴジラとティラノサウルスの区別も付かないような子供だったが、少なくとも恐竜に興味を持った僕の為に、母親がレンタルビデオ店から借りてきてくれた映画が『ジュラシック・パーク』だった。

幼少期の記憶はおぼろげだが、最初に『ジュラシック・パーク』を見た時の僕は、ただ圧倒されたことを覚えている。最初にスクリーンにブラキオサウルスが出てきた時、僕の視点とグラント博士のそれは完全にリンクしていた。その瞬間から、僕は怪獣ではなく『恐竜』というものに魅せられてしまったのだ。ダビングしたビデオのテープが擦り切れるまで、何度も何度も繰り返し観たのを覚えている。

続編の『ロスト・ワールド』も然りで、島を飛び出して大都会で暴れ回るTレックスの姿にワクワクさせられっぱなしだった。当時の僕は図鑑に載っている恐竜なら何でも暗唱出来る位の「恐竜博士」で、将来の夢はもちろん古生物学者だった。

そして、1993年から時は経ち、2022年現在。

僕はつまらない大人になった。毎日好きでもない仕事をして、へとへとになりながら家へ帰る。残業終わりの数少ない時間にゲームをすることくらいが息抜きで、特に目立った何かを成し遂げてもいない、子供の頃の僕が忌み嫌っていた、平凡な社会人に成り下がった。

家庭的なしがらみや自身の至らなさ故あって、古生物学者にはなれなかった。かつてキラキラした目で恐竜図鑑を眺めていた少年はもういない。いるのはただの、濁った目をした大人だ。

マスクをして、死んだ目をして満員電車に乗る。テレビには毎日、暗いニュースばかり流れている。世界は少しずつ、よくない方向に傾き始めているような予感がしている。

そんな中、ジュラシック・ワールドの完結作がついに公開される、という情報が入った。

監督はジュラシック・ワールド一作目のコリン・トレボロウが再登板。シリーズキャストの続投に加え、サム・ニールやローラ・ダーンなど、初代ジュラシック・パークからのキャスト出演が決定するなど、半信半疑のうちにいつの間にか予告編までもが公開されていった。世界規模の感染症の影響もあって公開自体は予定より一年も遅くなってしまったものの、ついに”Jurassic World: Dominion”こと『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は公開日を迎えたのだ。

初代ジュラシック・パークの公開から実に三十年。

当時の恐竜少年が大人になるには、十分すぎる時間だった。

最終章に相応しい「恐竜映画」

さて、ここからが本題だ。初代ジュラシック・パークより三十年の時を経て公開した『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』。僕はといえば、仕事の合間を縫って予約した日本最速4DX試写会1に当選し、運良く公開よりおよそ一週間前に鑑賞することが出来た。

良い年してJPTシャツを着てはしゃぐオタクの図

万を持して観た感想はと言えば、オーウェンやクレア人間同士のドラマはもちろんだが、やはり特筆すべきは最初から最後まで、とにかく恐竜だらけのノンストップアクションの連続!恐竜が写っていないカットがないかのように思えるほど、ひっきりなしにスクリーンの中で恐竜たちが躍動する様は、まさにジュラシック・パークの遺伝子を継いだ「恐竜映画」である証明だった。

シリーズお馴染みのティラノサウルス・レックスやヴェロキラプトル、ディロフォサウルスなどの再登場に加え、新たに登場するアトロキラプトルやテリジノサウルスにピロラプトル、そして何と言ってもTレックスのライバル枠として登場する超巨大肉食恐竜ギガノトサウルス!シリーズ最多、計20体以上の恐竜や古生物の登場と、恐竜映画として一切妥協のない姿勢が伺える

初代ジュラシック・パークを彷彿とさせるド迫力の巨大アニマトロニクスと、現代技術の粋を凝らした美麗なCGの融合で再び現代に蘇りし恐竜たちが巻き起こす、世界を又に翔けた大波乱。

初代ジュラシック・パークを彷彿とさせるアニマトロニクスの豊富さ!

コスタリカのイスラ・ヌブラル島から始まった物語がアメリカに、そしてイタリアのマルタからバイオシン・バレーまで……およそ2時間半ある上映時間の中で、世界を股にかけ次々と舞台が入れ替わる様は某イギリスのスパイ映画でも見ているかのようだった。

何より嬉しいのが、過去作からのいわゆる「レジェンド」キャストの再登板だ。

シリーズファンからしてみれば、これ以上の「ご褒美」はない

アラン・グラント博士(サム・ニール)、エリー・サトラー博士(ローラ・ダーン)、イアン・マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)、ヘンリー・ウー博士(B.Dウォン)

シリーズの終わりに、初代ジュラシック・パークに登場したキャストがメインキャストで登場するという豪華ぶりに大興奮!オーウェンやクレアたちの物語と平行して、グラント博士一行の物語も進んでいき、結果的に2つの道が交差し、全ての主要キャストが揃った時の感動たるや!

もちろん、ただ過去作のキャストが再登板しただけではない。

作中の流れに沿って登場人物も年を取り、年月に応じたライフスタイルの変化が物語に反映されているのもファンにとっては嬉しい部分だ。

グラント博士とサトラー博士

初代ジュラシック・パークでは、グラント博士と恋人の関係にあったサトラー博士。

しかしジュラシック・パークⅢにて二人が再登場した際には、サトラー博士は別の男性と結婚し、子供を授かり幸せな家庭を築いていた

ジュラシック・パークⅢより

だが、今作で再登場するサトラー博士は既に夫とは離婚しており、学者として復職することでセカンドライフを満喫している。

Ⅲで見せた家庭的な姿とは一点、かつてグラント博士と肩を並べていた時のようなワイルドな魅力ある女性に戻ったのだ。子供を立派に育て上げ、夫の力を借りずとも、社会的地位を持ち活躍する。まさに現代で理想とされるような、独立した女性象とも言える。

SNSでマルコム博士と交流を続けていたり、農作物の問題からバイオシン社の陰謀にいち早く気づくなど、中年に差し掛かった現在でも、世の中の流れに敏感な、アクティブな女性であることはセリフの節々から感じさせられる。

反面、グラント博士は独身のまま、ずっと古生物学者として研究に身を捧げていた。サトラー博士とは違いSNSもやっていないとのことなので2やはり初代ジュラシック・パークから本質的に変わっていない様子が伺える。3

エリーは、今の自分の人生を「自由!アラン・グラントのように!」と語るが、グラント博士は後に自身の人生を「幸せではなかったよ」と自嘲気味に語る。

自由な人生を満喫するサトラー博士

お互いの人生を、お互いに羨ましがっているようにも見える。

グラント博士もサトラー博士も、かつて愛しあっていた者同士、道を違えてしまったことに後悔の念を感じていたのかもしれない。

ゆえにサトラー博士は再び学者としての道を選択し、グラント博士のように自由な人生を歩むことにした。

グラント博士も、ジュラシック・パークやⅢでの出来事などで、古生物学者をやめても良いくらい恐竜にはひどい目に遭わされている。生きた恐竜の存在が当たり前になった社会で、なぜ土に埋もれている化石ばかりに目を向けるのか――化石の中に真実があるというのは勿論だが、古生物学の中に、自分のそばからいなくなったサトラー博士の姿を見ていたのではないか

グラント博士はサトラー博士の導きにより、発掘現場からヘリに乗せられ、恐竜の世界へと連れ出される。この一連の流れは、本作がジュラシック・ワールドもとい、ジュラシック・パークの続編であることの証明だ。4

初代ジュラシック・パークと同じように、二人が最初に出会う恐竜がケラトプス科の恐竜というのもオマージュ点として味わい深い部分だ。

アニマトロニクスで作られたリアルな恐竜は、再び我々に感動をもたらしてくれる

グラント博士とサトラー博士がヘリでバイオシン・バレーに降り立つ際も、ブラキオサウルスと同じ竜脚類のドレッドノータスが出迎えてくれるあたり、今作がジュラシック・パークの明確な続編として地続きであることを、視聴者に思う存分見せつけてくれる。

化石のようなグラント博士、セカンドライフを満喫するサトラー博士の間を取るように、相変わらず自由人のマルコム博士が描かれているのも面白い。

いい意味で、一作目からブレないスタンスのマルコム博士

カオス理論学者のマルコム博士は、現在はバイオシン社に雇われ、職員や学生相手に講演をしている。若い世代にもサインをせがまれ、全く悪い顔をせずに応じているあたり、彼の世渡りの上手さが伺える。軽薄なお調子者の様子でいて、バイオシン社の陰謀をしっかりサトラー博士にリークするあたりも、マルコム博士らしいずる賢さは健在だ。

『ロスト・ワールド』や『Ⅲ』にてキャストの再登板はあったものの、グラント、サトラー、マルコムの三人が共演はまさに初代ジュラシック・パーク以来。シリーズのファンにとっては感涙ものだ。時を経て境遇や性格の変わった部分は少しずつありつつも、初代からキャラクターの基礎部分は変わっていないあたりが伺えて、まさに同窓会的な懐かしさを覚えた。

そして何より特筆すべきは、グラント博士の「帽子」だ。

インディ・ジョーンズのオマージュであることが公言されているこのカウボーイハットこそ、博士の冒険の象徴だ

初代ジュラシック・パークからシリーズを通して、グラント博士のトレードマークとして着用されていたカウボーイハット。ジュラシック・パークⅢでプテラノドンの襲撃にあった際、一度無くしかけたものの、同行していたビリー・ブレナンの手によって回収されていたことが、Ⅲのラストで明らかになる。

しかし本作においては、ディメトロドンが生息する地下坑道にて、またも帽子を落としてしまう。取りに行こうとするグラント博士だが、サトラー博士に「そんなもの置いていきなさい!」と言われ、ディメトロドンの洞窟に帽子は置き去りになる

一見、なんてことのないシーンだが、本作のラストを踏まえると、シリーズの総決算としてとても重要なシーンということがわかる。

本作におけるラストにて、バイオシン・バレーにおける事件の公聴会に、グラント博士とサトラー博士が出席する。その際、グラント博士は発掘現場にいるようなラフな格好ではなく、フォーマルな紳士服を来て、サトラー博士の隣にいる。

もちろん、公聴会という場所において、きっちりとした服装を選ぶのは当然だ。しかし、インディ・ジョーンズのオマージュとして描かれたカウボーイハットは、グラント博士の冒険の象徴とも言える。それを被っていないということは、グラント博士の冒険が今作で終わったこと。そして、研究一辺倒だったグラント博士が、サトラー博士と一緒に居ることを選んだことが示される

ジュラシック・パークより

ジュラシック・パーク事件の因縁と、エリーとの関係が呪いのように付きまとっていたグラント博士。長年の恋愛模様に区切りをつけ、今度こそ愛し合った二人が一緒になるラストに、僕は感涙の思いを抑えられなかった。二人の関係性にひと区切りをつけたこの一点で、僕は本作に惜しみない拍手を捧げたい。

ウィズ・ダイナソーの世界

今作では、前作『炎の王国』のラストにて、イスラ・ヌブラル島やイスラ・ソルナ島から連れられてきた恐竜たちが脱走した後、現代社会にて巻き起こる混乱の様が描かれる。

Battle at Big Rock | An All-New Short Film | Jurassic World

『炎の王国』の後日談兼、本作の前日譚として描かれたショートフィルム『Battle at Big Rock 』でも、脱走した恐竜たちが社会に及ぼす影響が語られている。

さらにロックウッド邸から逃げ出したヘンリー・ウー博士は遺伝子サンプルを手に抱えたまま、何者かと合流していた。それはつまり、恐竜を作り出す遺伝子操作技術が、インジェンやマスラニ社のものだけでなく、外部に広がっていったことを示唆されている。

事実、今作ではバイオシン社という大企業が、かつてのインジェン社以上の技術力で新たな恐竜や古生物を再生し、イタリアの山脈地帯に広大な恐竜保護区を設立している。

その一方、裏社会にて取引された恐竜がペットや家畜、違法賭博目的にて流通している様子が本作で描写されている。劣悪な環境で育てられた恐竜が裏取引市場では高値で取引されており、中にはアトロキラプトルのような明らかに軍事目的で製造されたような、生物兵器まがいの恐竜までもが取引の対象となっている。

マルタ島の裏市場で取引される恐竜たち

実際、現代社会においても絶滅危惧種など貴重な動物が違法に捕獲され、裏社会にて法外な価格を付けられて流通していたり、家畜の劣悪な育成環境が話題になったりと、本作での恐竜の扱われ方は、現代社会での動物愛護問題に通じるリアリティがある

恐竜は「怪獣」や架空の生き物ではない。あくまで「自然界に生きる動物」として認識するべきという姿勢が作中全体から伺えたのが、個人的に良かった部分のひとつだ。

更に言うと、新型コロナウイルスが世界中にて感染拡大を続けるさなかで撮影された本作が、現在の時世の影響を受けていることは間違いない。コロナウイルスのワクチンが開発されてなお、流行が止まない現代社会では、コロナウイルスの存在を当たり前として、共存していく「ウィズ・コロナ」やその後を見据えた「アフターコロナ」という考え方が受け入れられつつある。

恐竜の存在が当たり前になった世界で、その被害や影響を受け入れ、いかに恐竜と人間で共存していくのか……まさに「ウィズ・ダイナソー」とも言える社会の様子が、本作にて描かれる。

登場人物の「ライフスタイル」の変化

本作のテーマとして考えられるのが「変化」と「適応」という概念だ。

前述した通り、恐竜が放たれた世界に適応する人類、その逆で、人間社会に放たれた恐竜たちがどう、環境の違う中で生き抜いていくのか……という双方がある。

本作のメインキャストであるオーウェンとクレア、そして前述したグラント博士とサトラー博士の両方を観ると、彼らも作中の出来事を通じて、以前より少しずつ変化していることがわかる。

例えばオーウェンとクレアは、前作から引き続き恐竜保護活動を継続しながら、メイジーを守るという建前で擬似的な家族を形成しているが、思春期に差し掛かったメイジーの扱いに困っている様子が認められる。

前作『炎の王国』のラストより

かつてのオーウェンとクレアは、お互い仕事人間でエゴが強く、愛し合ってはいるものの、付き合ったり離れたりとぎこちない関係を続けていた。メイジーはと言えば『炎の王国』での出来事で、世界中にクローン人間としての名前が知られることになっている。悪意を持った人間がメイジーを狙うことを防ぐ為、オーウェンとクレアは人里離れた山小屋で、ひっそりと暮らしている。

メイジーは立派な思春期に差し掛かる年齢であり、山小屋での暮らしに辟易している。さらに、自らが母親のクローンであるということも自覚しており、自分のアイデンティティに葛藤している。

その最中に、ヴェロキラプトル「ブルー」の子供である「ベータ」とメイジーを狙った誘拐事件が発生、オーウェンとクレアは両者を取り戻す為、世界を股にかけた冒険をすることになる。

ヴェロキラプトル「ブルー」とその子供「ベータ」

オーウェンはクレアの夫として、メイジーの父としての自覚を持ち、あらゆる危険を超えて、冒険に挑む。元々、オーウェンはヴェロキラプトル「ブルー」の親代わりとして、幼少から面倒を見てきた経験があるものの、ラプトルの調教師としての腕前は、年頃の少女を相手にするのは頼りない部分があった。

彼がブルーの子供である「ベータ」を命がけで取り戻そうとするのは、最後まで面倒を見きれず野生に放たれてしまったブルーに対しての責任を果たそうとしている側面もあるのだろう。ブルーがオーウェンから本当の意味で独り立ちするための、親としての義務感もあったのかもしれない。

クレアは、かつてジュラシック・ワールドで起きた事件での責任を取る為に活動していたが、事件への罪悪感や葛藤を乗り越え、何よりも娘のために危険を犯す覚悟を持っている。ジュラシック・ワールドにて甥であるザックとグレイを蔑ろにするほど、仕事人間だったクレアとは全く別人だ。

恋愛下手な男女だった二人は、メイジーとの関わりを通じて父と母へ、本当の夫婦へと変わっていく
そして、自らの出自を知ることで、オーウェンとクレアを「両親」と認めることが出来たメイジー。

ジュラシック・ワールドから続いてきたオーウェンとクレアの曖昧な関係が、メイジーという架け橋を通じて確固たるものに変化する。いびつな形で繋がった疑似的な家族が、本当の家族のかたちを得るのが、本作で語られるひとつのストーリーだ。

ウー博士は果たして、悪人だったのか?

ジュラシック・パークにて恐竜再生に携わった第一人者として描かれたヘンリー・ウー博士

ジュラシック・ワールドや『炎の王国』においてはインドミナス・レックスやインドラプトルなどのハイブリッド恐竜を生み出し、いわば「諸悪の根源」のように描かれてきた。

遺伝子操作されたイナゴを複雑な目で見つめるウー博士

だが、本作では一転、自らの過ちについて非常に自覚的で、バイオシン社のCEOであり、今作の悪役として登場するルイス・ドジスンに対して異を唱える部分すら見受けられた。

バイオシン社製の作物以外を食い荒らす遺伝子改造イナゴを生み出し、バイオシン社が世界を支配する構想を語るドジスンに対し、それは生態系を破壊する行為だと批判するウー博士。

今までの行為を振り返ると、ハイブリッド恐竜を創り出したことで、かつての事件の原因の一部になっていることは確かだが、実際のところパーク崩壊の原因になったのは運営やセキュリティに関しての見通しの甘さがほとんどで、ウー博士自体に大きな非があるわけではない。インジェン社やマスラニ社の依頼でハイブリッド恐竜を創造し、遺伝子研究を進めていただけで、彼は決して、悪意を持った研究者ではなかった。

自らの行いに自覚的で、贖罪の意に傾いているという意味では、原作小説のジュラシック・パークにおけるウー博士の描かれ方に近い。

マイクル・クライトンによる原作小説では、パーク内で恐竜が繁殖をはじめた原因を自身の研究による失態と認め、ラプトルの営巣地を殲滅する作戦に手を貸した結果、恐竜の手にかかり命を落とす。

遺伝子研究に対し真摯な姿勢を見せる点に関しては、メイジーのクローン元であるシャーロットからの影響も伺える。ジュラシック・パークにおける恐竜再生が行われた90年代において、ウー博士とシャーロットは同僚で、ウー博士も彼女の研究姿勢に尊敬の念を抱いており、遺伝子研究に明るい未来を見ていたシャーロットの姿勢を、ウー博士も受け継ぐ意を見せていた。

最終的にウー博士は、自身で生み出した遺伝子改造イナゴを駆逐するため、さらなる遺伝子改造イナゴを生み出し野に放つ。

ウー博士は今後どういった道筋をたどるのだろうか。

シャーロットにより操作されたメイジーの遺伝子は、将来、遺伝子由来の疾患に対する解決策として機能することを示唆している。さらにバイオシン社は、恐竜をはじめとした先史時代の動物の免疫機能が、人間の医学にも役に立つという研究も進めていた。

メイジーの遺伝子を元に、ウー博士の研究が人類の未来を救う。それ自体がウー博士の犯した過ちに対し彼自身ができる「贖罪」なのかもしれない。

シリーズ最多の恐竜について

本作における恐竜は、前作『炎の王国』にてロックウッド邸から脱走したものだけでなく、遺伝子技術が拡散した社会にて秘密裏に生み出され、裏社会で取引された恐竜なども登場する。

恐竜が裏社会で取引されているというのは前作『炎の王国』やNetflixで配信中の『ジュラシック・ワールド サバイバル・キャンプ』でも語られている。

反面、違法に取引されたり脱走した恐竜を保護するために、バイオシン社が活躍している。

特に印象的だったのは、マルタ島にてオーウェンとバイクチェイスを繰り広げたアトロキラプトルだ。

本作のキービジュアルにも描かれているアトロキラプトル

アトロキラプトルは獲物の匂いを覚え、仕留めるまで追い詰めるハンターとして調教されている。5

まさにかつてのオーウェンが行っていた、ヴェロキラプトルを調教する研究が応用されており、前作『炎の王国』に登場したインドラプトルのような生体兵器として転用されている。

自らの培ったノウハウの応用で殺人兵器と化した「ラプトル」に追われるのが、かつてラプトル4姉妹の調教師だったオーウェンとバリーというのがまさに皮肉だ。ラプトルの特性を熟知したオーウェンとバリーが故に、アトロキラプトルの追撃から逃げ延びたというのもまたニヤりとさせられる点である。

さらに本作で初登場するテリジノサウルスの存在も見逃せない。

バイオシン・バレーの密林に不時着したクレアを狙うテリジノサウルス。

シカを長い爪で吹き飛ばし、クレアを付け狙うなど残忍そうな性格が見て取れるが、実際の研究によれば、雑食性で、どちらかというと植物食であったという説が有力である。

確かにシカは爪で薙ぎ払っただけで食べていないし、クレアも追いかけただけで捕食しようとはしていない。もしかしたら縄張りを侵されて不機嫌だっただけかもしれないというのが、ジュラシック・シリーズには珍しく、古生物学的な部分に則った描写で個人的には好きな部分だ。

ピロラプトルの扱いについては、期待していた分、不満が残る。

正直もっと活躍を期待していた羽毛恐竜ピロラプトル

ヴェロキラプトルやアトロキラプトルなど、ドロマエオサウルス科に属する恐竜は、現代の研究においては鳥類と近縁のため、羽毛が生えていたという説が一般的だ。もちろんジュラシック・パークが公開された当初はそのような説は存在しなかったため、トカゲのように鱗で覆われた外見として復元されている。

ジュラシック・パークの作中では、恐竜を復元する際に欠損したDNAをカエルや爬虫類など、別の動物の遺伝子で補っているがために、生前の姿とは異なるという設定がされている。

それでも僕は、このラプトルが一番好きなんだなぁ

バイオシン社では恐竜の復元技術が進歩しており、生前に限りなく近い恐竜を再現できるとして、その一例としてピロラプトルが登場したとされる。

そのため「遂に羽毛付きのラプトルが来た!」と恐竜好きからは喜ばれていたが、蓋を開ければ、よくわからない理由で氷の湖を泳ぎはじめて、(もちろん科学的な根拠はゼロ。寒冷地に住んでいた証拠もない)オーウェンとケイラを襲撃するも、彼らの機転により逃げられてしまい、その出番を終える。

アトロキラプトルたちが印象深い活躍をしてくれた分、せっかくの羽毛付きラプトルにはもう少し頑張ってほしかった……というのが本音である6逆に言えば、短い間で強い印象を残してくれた分、何らかの別媒体で新たな活躍を見せてほしいと思わざるを得ない。

他にも、本作で初登場するした翼竜ケツァルコアトルスやディメトロドンなど、ちょっとした部分にも恐竜や古生物が出ていたりと、最初から最後まで多種多様な種で満載なのも本作の好きな部分だ。

戦闘機のごとく出てきたケツァルコアトルス。物語的に意味は薄いが、インパクト抜群の登場だった

一度見ただけでは分からなかった部分を再度確認するために、何回観に行っても楽しめる魅力が、本作には溢れている。

ギガノトサウルスとTレックス

映画の上映開始前、youtubeにて公開されていた公式プロローグ映像では、白亜紀当時のティラノサウルスと思しき姿が描かれている。

The Prologue – Jurassic World Dominion

生前の羽毛が生えたTレックスは肉食恐竜ギガノトサウルスとの戦いに敗北し、息を引き取ることになる。この時のTレックスの血を吸った蚊が琥珀に封印され、現代へと繋がっていくことが示唆されている。

そして今作では同じくバイオシン・バレーに生息しているギガノトサウルスと頂点捕食者の座をかけて戦うことになる。 しかしながら、Tレックスがギガノトサウルスと対峙した際には手も足もでず、Tレックスがせっかく捕まえた獲物を横取りされるまでの、弱々しい姿となってしまっている。

ギガノトサウルスVSTレックス

初代ジュラシック・パークからずっと彼女の活躍を観てきたファンからすれば、一方的にギガノトサウルスに蹂躙されるティラノサウルスの姿については、正直納得がいかない部分が多い

同様の声が海外のファンからも上がっている。

コリン・トレボロウ監督はファンの質問に対しツイッターにて、


Tレックスの平均寿命は28年のため、今作のTレックスは寿命が近かったのです。それでも、自分の復讐のために立ち上がる強さがありました。復讐には時間がかかることもあります

と、年齢がゆえにTレックスが苦戦したことを示唆している。

初代ジュラシック・パークにて登場した際のTレックスは、あの時点で3歳。それからおよそ30年が経過した状態のTレックスはといえば、人間に例えるとかなりのおばあちゃん恐竜ともいえる。逆にバイオシン社により生みだされて数年の、若々しく全盛期のギガノトサウルスに圧倒されるのは一見、理がかなっているように思える。

現実世界での研究を踏まえても、噛む力や体重の推定値、筋肉量などから考慮しても、Tレックスのスペックが上回っていると推測される。ギガノトサウルスが勝っているのは体の全長くらいだ。ジュラシック・シリーズの恐竜が、現実世界のそれと大きく違うのはもはや当たり前だが、それでも一方的にやられるTレックスの描写については、初代ジュラシック・パークから彼女の活躍を観てきた自分としては、とても受け入れ難い部分ではあった。7

かと言って、ギガノトサウルスの扱いに満足していると言えばそうでもない

監督曰く「ジョーカー」に例えられたギガノトサウルスは、ジョーカーほどに残虐だったろうか……

本作におけるメインヴィランに据えられたギガノトサウルスは、コリン・トレボロウ監督曰く「ジョーカーのような」存在だと語られた。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の新恐竜ギガノトサウルスは「ジョーカーのような」存在だと監督が発言
「ギガ」の新たな画像も公開された

「この恐竜はただ、世界が燃えるさまを見たいと思っているのです」

と、さぞ残酷な性格であることを語られるが、実際のところは老いたTレックスを圧倒し、メインキャストを少しの間窮地に追い込んだだけで、結果的に恐竜・人間双方の誰の命も奪ってはない。バイオシン・バレーの外にも出ず、破壊の限りを尽くしたわけでもない。

過去作品でメインヴィランを張ったスピノサウルスやインドミナス・レックスの恐ろしさに比べると、どうしても見劣りしてしまうきらいがある。もちろん、ただ人間を捕食したり建物を破壊するだけが恐竜の役目ではない。怪獣的な側面は恐竜映画には不要だが、それでも何か残虐性を示す要素が少しでもあれば、ギガノトサウルスの説得力も増しただろうと思ってしまう部分がある。

それでも、白亜紀当時を描くプロローグ映像にて、ギガノトサウルスに殺されてしまったTレックスが生前のリベンジをする結果になったのは個人的に熱いものがあった。

劇中のラストバトルにて、一度は倒されてしまったTレックスは再び目を醒まし、テリジノサウルスとのタッグにてギガノトサウルスを打ち倒す。

初代ジュラシック・パークやジュラシック・ワールドにて圧倒的な強さを見せつけたレクシィだ。もう少しギガノトサウルス相手に強さを見せつける、主役恐竜としての意地を見せつけてほしかったのが、初代からTレックスを愛していたファンとしての本音でもある。

だが。

6600万年前の過去から蘇ってからずっと、戦いや人間社会での混乱に巻き込まれ続けた彼女の生涯の終わりに、安住の地が見つかったこと。もう二頭のティラノサウルス――おそらくはロスト・ワールドに登場したつがいのTレックスと共に、残りの生涯を暮らしていくだろう様子を見せてくれたことは、安息の地を得ることのなかった彼女にとっての最大の救いではないかと僕は思う。

Tレックスとメイジー

さらに、このTレックスの結末は、メイジー・ロックウッドにも重なる部分がある。

前作よりも少し大人びたメイジー

前作『炎の王国』にて、ジュラシック・パークの創設者のひとりであるベンジャミン・ロックウッドの孫娘として登場したメイジー。

前述したように、彼女はベンジャミンの一人娘であるシャーロットのクローンである。前作においては、事故死した一人娘を悔やむあまり、ベンジャミンが創り出したクローン人間であると説明されていた。

ゆえにメイジーは自らのアイデンティティを見失い、母親の影を追いかけるように生きていた。

しかし、今作ではシャーロット自らが、意図的に自分の母体を用いてメイジーを創り出し、自らの本当の娘のように愛していたという前作とは異なる真相が語られる

クローンであるものの、クローン元とは違う人間。遺伝子は同一なものの、シャーロットはメイジーを自分とは違う愛娘として扱い、未来への希望を託していたのだ。恐竜を復活させる遺伝子研究を通じ、遺伝子由来の疾患を生まれる前になくすことができる技術をメイジーにて実現した。いわば恐竜の研究=過去から生まれた命が、ついには人類の明るい未来を創造するに至ったと言っても過言ではない

Tレックスはとは言えば、プロローグ映像にて描かれた生前、ギガノトサウルスに殺され息を引きとっている。その後6600万年の時を経てインジェン社にクローン再生され、新たな生を得たという経緯がある。

今作も一度は力尽きたかと思いきや、再度意識を取り戻し、テリジノサウルスとの共同戦線にてギガノトサウルスに勝利する。最終的にTレックスはバイオシン・バレーにて別の二頭のTレックスと出会い、安住の地を得るのであった。

例えクローンとして生を受けても、遺伝子に定められた運命に、必ずしも従う必要もない。自らの人生を歩み始めたのは、メイジーとTレックスの両方だったのだ。

ルイス・ドジスンの結末

登場人物のほとんどが、過去作よりも成長を受けた点として、描かれているが、唯一愚かな人間として描かれているのが、バイオシン社のCEOであるルイス・ドジスンだ。

ルイス・ドジスンは初代ジュラシック・パークにもバイオシン社の職員として登場し、デニス・ネドリーに産業スパイとしての仕事を持ちかけた張本人でもある。

ネドリーにDNA泥棒の仕事を持ちかけたのが他でもないドジスンだ

いわばジュラシック・パーク崩壊の原因を作ったひとりだ。

確かに、インジェン社に先を越されたライバル企業だったバイオシン社を、30年後に遺伝子技術のトップレベルの企業に成長させたドジスンの手腕は、経営者としてはかなりのものと言える。

前作『炎の王国』にて脱走した恐竜の保護を引き受けたのもバイオシン社だ。遺伝子研究を進め、より精度の高い恐竜再生に成功しただけでなく、先史時代の免疫機能に着目し、医療技術にも貢献している。イタリアの鉱山地帯に恐竜保護区を設立するなど、かつてのインジェン社をゆうに超える発展ぶりだ。

突然訪れたグラント博士やサトラー博士にも好意的で、人当たりも良さそうに見える。

しかし。

バイオシン社が社会貢献活動をする一方で、ドジスンはバイオシン社製の農作物以外を全て食い荒らす遺伝子改造イナゴを創り出すようウー博士に指示をし、自然界に解き放っていた。バイオシン社の農作物以外が育たなくなれば、バイオシン社の利益が増大するという分かりやすい算段だ。

さらに、作中では語られていないが、前述したアトロキラプトルもバイオシン社製ということはゆうに想像できる。インジェン社やマスラニ社が無き今、恐竜を復活させる遺伝子技術は全世界に拡散されている。しかし精度の高い恐竜再生が実現可能なのは、バイオシン社以外に存在しない。インジェン社が再生した恐竜たちのリストにアトロキラプトルは存在しない。新種の再生、さらに獲物の匂いを記憶して追いかけるほどに調教された練度の高さ――やはり恐竜に対しノウハウのある何者かが関与しているに違いない。

ヴェロキラプトル「ブルー」の子供である「ベータ」とメイジーを誘拐するよう、指名手配犯であるレイン・デラコートに指示したのもドジスンだ。

バイオシン社は恐竜保護という社会貢献活動の裏側で、反社会的勢力とつながり、闇市場に恐竜を売り飛ばしている悪徳業者という部分が作中から容易に推察できるのだ。

だが、バイオシン社も一枚岩ではなかった。

バイオシン社の良心ラムジー・コール

バイオシン社におけるドジスンの腹心であり、期待の若手ホープであるラムジー・コール

ラムジーはバイオシン社の広報部長であり、ドジスンに一目置かれているほど有能な社員であるが、内心では非合法な手段にて利益を追求するドジスンの方針に反対しており、マルコム博士を通じ、外部にバイオシン社の悪行をリークしようと計画する。

ドジスンは有能なビジネスマンであったかもしれないが、部下からの人望は薄い。結果的にドジスンの悪行が回り回って、バイオシン・バレーの崩壊に導くことになる。バイオシン・バレーが大規模な火災に巻き込まれ、自らの計画が白紙と化した際には、子供のように取り乱している。

ジュラシック・パークからおよそ30年。グラント博士やサトラー博士が自らの人生を通じ、ライフスタイルの変化を通して成長したのに対し、ビジネスマンとして目先の利益のみを追求したドジスンは、会社の成長に反して内面は未熟なままで、精神的には幼稚なままだったのだ。

最終的に逃げだそうとしたドジスンは、停電した地下通路にて、ディロフォサウルスに襲われる。

ジュラシック・パークの時と同じく、毒液にて獲物を殺すディロフォサウルス

ディロフォサウルスが吐き出した毒液に目を潰され、生きたまま喰われる様は、皮肉にもかつて自分が産業スパイとして差し向けたデニス・ネドリーの末路と全く同じだった。

「自然をおもちゃにし、いじくりまわしている」

かつてジュラシック・パークを批判したマルコム博士の台詞が示唆しているように、ドジスンは遺伝子技術にて世界を支配し、自然すらコントロールできる、いわば神になろうとしていたのかもしれない。結果的に全ては思い通りにならず、ドジスンが生み出した楽園=バイオシン・バレーは大火災に巻きこまれる。

ジュラシック・パークの運営に失敗したジョン・ハモンドと同じ過ちをドジスンは犯してしまった。その結果、自らの被造物である恐竜に喰われて命を落とすという、因果応報な末路が待っていた。8

人間は自然を支配することはできないという、シリーズ共通のテーマが、ドジスンの死により再び証明されることになったのだ。

なぜ「イナゴ」だったのか?

個人的には非常によく出来た作品であると評価した今作ではあるが、批判的な意見も多い。

主に挙げられる批判点を2つピックアップすると、

・ティラノサウルスとギガノトサウルスの扱い

・「イナゴ」の存在が挙げられる。

大量発生するイナゴ

ティラノサウルスとギガノトサウルスの関係については前述した通りだが、遺伝子操作されたイナゴにより引き起こされた事件は、本作における重要なファクターだ。

バイオシン社が作り出したイナゴを巡る事件がメインストーリーを担っているため、恐竜が二の次になっているというのが主な批判点として見受けられる。

では、なぜイナゴがストーリーの主軸として据えられているのだろうか?

旧約聖書や『出エジプト記』において、イナゴは滅亡の象徴として語られる

旧約聖書においてはイナゴは悪魔の使いであり、イナゴの王アバドンは人間を殺す事なく苦しめる残酷な悪魔として登場する。『出エジプト記』においては神がもたらした罰として蝗害が描かれる。

食料不足にて徐々に飢え、苦しむ人類。救いはバイオシン社の農作物のみ。「人間を殺すことなく徐々に苦しめる」まさにバイオシン社の所業は、イナゴの王アバドンのそれと重なってくる。

神は彼らを祝福された。神は彼らに仰せられた。「生めよ。増えよ。地に満ちよ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地の上を這(は)うすべての生き物を支配せよ。」(創世記1:28、新改訳2017)

聖書といえば創世記にも思い当たる節がある。

アダムとイヴは、食物連鎖の頂点として全ての生き物を支配せよと神に祝福されていた。

本作の原題Dominion(支配)は、創世記に関しての言及であるとも考えられる

アダムとイヴから産まれた人類の末裔は、全ての生き物を支配した挙げ句、ついに遺伝子操作という禁忌の領域に踏み出した。

聖書における神が支配する世界以前、ノアの方舟よりも前の時代――恐竜の再生に手を出したのだ。

神の領域に近づいた人間がどうなるか。バベルの塔の寓話にあるように、神の怒りを受けるのだ。悪徳が蔓延った街ソドムとゴモラは、空から降り注いだ硫黄と炎に焼かれ消滅した

現にどうだろうか。バイオシン社が作り出したイナゴはグラント博士たちの侵入をきっかけに、火災と共に脱走し、炎の渦となり楽園を地獄へと変えた。自らの利益しか考えず、安易に神の領域に踏み込んだドジスン。彼が作り出した楽園の失墜こそ、まさにソドムとゴモラの逸話にぴったりだ。

燃える楽園に佇むアダムとイヴの末裔

聖書や神話的寓話のモチーフとしてイナゴが機能しているという部分に加え、一企業における社会操作という都市伝説的な側面にも言及されていると考える。

水道水にはフッ素による洗脳物質が入っている。飛行機雲はケムトレイルという化学物質が散布された跡である――などトンデモ陰謀論はさておき、遺伝子組換え農作物が危険だという話は、日本でも聞く話だ。

実際に遺伝子組換え農作物の危険性が証明されたことはいまだないにも関わらず、今だに「どこか危険でないか?」という空気感が現代社会の中でも拭い去られずにいる。

ジュラシック・ワールドの世界にて農作物のシェアを多く席巻しているバイオシン社が、まさか自身の農作物の遺伝子を操作していて、自社の作物以外に害をなすイナゴでその他の農作物を消滅させようというのは、現実に置き換えて考えてみると一見コテコテの陰謀論だ。そういった陰謀論を大真面目に唱えている人間は、アメリカだけでなく日本にも多く存在する。

そもそもジュラシック・パークとは、人間が神の領域に踏み込み、自然からしっぺ返しを食らう物語だ。

マイクル・クライトンの原作からして、寓話的、教訓的な意味合いが多分に含まれている。

イナゴの存在は聖書における神話的・寓話的なな意味合いに加え、ポリティカル・スリラーとしての要素を際立たせるキーパーツとして、本作において有効に機能していることは間違いないのだ。

単純に物事を批判する前に、その背景や文脈にほんの少し想像を巡らせてみる。たったこれだけの事で、映画をはじめとした創作物はこれほど面白くなるのだと、覚えておいてほしい。

生命は、必ず道を見つける

恐竜の楽園だったバイオシン・バレーは、施設で起きた火災による炎に包まれ、地獄のような様相に変化する。まさに白亜紀末期に起きた恐竜絶滅時のような光景が、スクリーンに描き出される。

巨大隕石により運命を絶たれた恐竜たちが、再び同じ末路を辿ろうとしていたのだ。

だが、実際のところはそうではなかった。ドジスンの死をきっかけに、腐敗した上層部がいなくなりクリーンとなったバイオシン社の保護区は、再び恐竜たちの楽園となった。

紆余曲折はあったものの、かつてジョン・ハモンドが抱いた夢が叶ったのだ。

『ロスト・ワールド』にて晩年のジョン・ハモンドは恐竜たちが平和に生きる世界を願った

ジュラシック・パークでの失敗を経て、夢破れたジョン・ハモンドが晩年に願ったのは、恐竜たちが何者にも干渉されず、自然のまま平穏に暮らす理想的な環境だった。病床に付したハモンドがマルコム博士に託した夢が、長い時を経て叶った瞬間だったのだ。

安住の地を失っても、楽園を見つけることができる。

例えば6600万年前。無惨な死を遂げた結果、現代に再生されたTレックスは、産まれた島から連れ出され、多くの戦いにて傷ついた挙げ句、人間社会でも理不尽に追われる結果になった。しかし結果的にバイオシン・バレーという安住の地を得て、仲間と共に余生を暮らすことができている。

お互いの関わり方に正解が見つけられず、曖昧な疑似家族として共に身を寄せ合っていたオーウェン、クレア、メイジーの三名も、結果的には夫婦となり父母となり、本当の家族として暮らしていく事になった。

既に高齢に差し掛かったグラント博士とサトラー博士も、自らに降りかかる因縁を清算した結果、真実の愛を見つけることができた。

「生命は、必ず、道を見つける」

「LIFE FINDS THE WAY(生命は必ず道を見つける)」

マルコム博士が初代ジュラシック・パークから何度も口にしている名台詞だが、今作ではもう一つの意味を含んだ言葉としても解釈できる。

LIFE=とは生命という意味の他、人生という意味合いもある。

恐竜だけでなく、この世界に生きる人間も含めた、生きとし生けるもの全て

失敗しようとも、歳を取ろうとも、どんな生まれだろうとも、罪を犯そうとも。

生きている限り、必ず道は開ける。

あらゆる人間が過ちを犯した結果が描かれた『ジュラシック・パーク』そして『ワールド』の結末として、これほどまでに希望のあるラストは、他にないと僕は考える。

6500万年を翔けた夢とアドベンチャーの終着点

本作において『ジュラシック・パーク』からはじまった物語は終わりを迎える。『ジュラシック・ワールド』としての三部作も終了であり、フランチャイズとしても一区切りの結末を見た。

小さな頃から『ジュラシック・パーク』に魅せられ、大人になった今でもシリーズの出来に一喜一憂してきた身としては、シリーズ公開前や直後におけるお祭り騒ぎに参加するチャンスがしばらくないと考えるだけで、正直寂しい気持ちになってしまう。

本作においても映画館やコンビニ、雑貨店などでも色々なコラボキャンペーンが開催されており、世間や町中がジュラシックまみれの状態で、まさに「ジュラシックな夏」だった。

ジュラシック関連グッズをこんなに買いました

まるで幼い頃から一緒に育ってきた幼馴染が急にいなくなってしまったような、そんな物悲しさのような感情が、今も胸のうちに渦巻いている。

6500万年を翔けた夢とアドベンチャーは、2022年の夏に終着点を迎えた。

しかしジュラシック・パークが残した遺伝子は、今も世界に息づいている。

ジュラシックパークの影響により、恐竜の存在は世間に数多く認知された。

現在、我々が博物館で恐竜の化石や骨格を見ることができ、毎年のように展覧会が開かれるのは、ジュラシック・パークの影響により恐竜や古生物の認知度が上がり、研究者や支援者が多く増えたからだ。

現代の古生物学者は初代ジュラシック・パークに影響を受けた世代が多い。毎年のように新たな新説が発表され、例えば北海道でテリジノサウルスの一種が見つかったりと、日本でも新種の発見が相次いでいる。

テリジノサウルス科の新種恐竜と判明 | 北海道大学総合博物館
総合博物館の小林快次教授らの研究グループは、北海道中川町にある約8300万年前(白亜紀後期)の地層から発見され

本作を観た現代の子どもたちや若者が、将来の古生物学者として活躍し、新たな恐竜を発見する未来もあるに違いない。

僕はつまらない人間だ。

古生物学者にはなれなかったし、今も自分自身で納得の行く人生を歩んではいない。

三十代に差し掛かった現在、人生において負け犬と言えるかもしれない。

しかし。

ジュラシック・パークという作品に出会えた事。

恐竜という、時を超えた浪漫に出会えたこと。

『ジュラシック・ワールド ドミニオン』において、シリーズの終幕に立ち会えたこと。

恐竜やジュラシック関連の話題において、多くの人々と知り合えたこと。

ジュラシック・パークが教えてくれた夢とアドベンチャーの精神は、僕の中に遺伝子として受け継がれている。その遺伝子をどう活かすか、どう次の世代へバトンとして受け継ぐか。

こうして僕がブログとして文字に残すのは、少しでも多くの人に、本作の正しい魅力を伝えたかったことに他ならない。SNSにてネガティブな情報が簡単に拡散してしまう現状、自分の言葉で、自分の意思を伝えることに、必ず意味はあるはずだと僕は信じている。

1998年8月。ロスト・ワールド公開時のイベントにて。左側の赤い服を着ているのがぼく

かつてジュラシック・パークに魅せられた幼少期の僕に恥じることのないよう。

これからの人生を歩むにあたっての希望を、僕は本作から貰った気がする。

以上で、本文の結びとさせていただきます。

スティーブン・スピルバーグ監督。及びコリン・トレボロウ監督。

その他制作陣や出演者の数々へ。

幼い僕に夢をくれて、本当にありがとうございました。

全ての始まりと、そして終わりがこのラストシーンに詰まっています

さようなら、ジュラシック・パーク。ジュラシック・ワールド。

大切な作品の終幕に立ち会えたことに、ただ、ただ感謝します。

まだ間に合う!『ジュラシック・パーク』シリーズはどこで見れる?

『新たなる支配者』はシリーズ完結作であるため、前述したとおりシリーズ作品を履修しておくと、面白さが段違いです。

今までの作品をおさらいしておきたい人、ジュラシックシリーズを見たことが無い方は、この機会に是非観てみることをおすすめします。

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