ジュラシック・パークの先駆け⁉『恐竜クライシス』感想

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恐竜

ハリー・アダムナイト作『恐竜クライシス』を読みました。

遺伝子操作により蘇った恐竜によりパニックに陥った田舎町を描く作品……という事で、あの有名な恐竜映画『ジュラシック・パーク』を連想させるあらすじですが、どうやらこの作品、ジュラシック・パークの作者であるマイクル・クライトンに直接的な影響を与えた小説という事で、前々から興味がある作品でした。

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あらすじ

うちのニワトリ小屋を荒らしているやつがいる。ショットガンを手に飛びこんだ農夫の前に、そいつが立ちはだかった。巨大な爬虫類のような頭部、鋭い鉤爪のついた前肢、太く長い尻尾。デイノニクス、はるか太古に滅びたはずの恐竜。やがて、次々に現われた恐竜たちはイギリスの片田舎の町を襲いはじめた…彼らは、いったいどこから。正真正銘、恐竜パニック小説の決定版。
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ジュラシック・パークの元ネタ?パクリ?

本作『恐竜クライシス』が出版されたのは1984年。

なんとマイクル・クライトンが『ジュラシック・パーク』の原作を出版するよりも7年も早い!

琥珀から恐竜の遺伝子を抽出した『ジュラシック・パーク』に対し、本作は保存状態の良い化石から抽出した遺伝情報を、ニワトリの遺伝子に転写するという方法で、恐竜を現代に蘇らせています。

どうやらこの時代は、遺伝子工学が多大な進歩を遂げ、恐竜復活が可能ではないかという話題がちらほらと出始めた時期だったということで、作者のハリー・アダム・ナイトはこのあたりから着想を得たようで、マイクル・クライトンと執筆の開始時期はほとんど同じだったよう。

しかし悲しきかな、刊行当時はまだ恐竜ブームが来ておらず。一部の書評家には高評価を得るものの「恐竜が蘇るだなんてありえない」と話題を呼ぶ前に埋もれてしまったようです。

しかし『恐竜クライシス』刊行の数年後である90年代。

ジュラシック・パークの映画化による恐竜ブーム到来により、皮肉にも本作の再評価が始まり、B級映画の巨匠と言われるロジャー・コーマンによる映画化も決まりました。

原作とは内容が全く違うB級低予算らしいクオリティの、正直微妙な映画化ではありましたが、恐竜ブームに乗っかり、映画としてはそこそこヒットした模様。その後続編が3作品公開されています。

当時としてはかなり正確な恐竜描写

今でこそ恐竜は、鳥に進化した恒温動物として認知されていますが、『ジュラシック・パーク』が公開されるまでは、恐竜は爬虫類と同じ変温動物であり、頭が悪い動物と思われていました。

しかし『恐竜クライシス』では、ジュラシック・パークに先駆け、恐竜が敏捷に動く恒温動物であり、生物として非常に優れていることが強調されて描かれています。メインとして登場するデイノニクスは非常に残忍かつ狡猾な殺戮者として物語の序盤から終盤まで、イギリスの田舎町を恐怖に陥れます。

ティラノサウルスの仲間であるタルボサウルスとのカーチェイスも描かれています。今でこそ「恐竜は車ほど早くは走れなかった」という説が出ていますが、鈍くてのろまな動物と思われていた恐竜のイメージを覆す、真逆の描写で書いていることが分かります。恐竜とのカーチェイスと言えばジュラシック・パーク。マイクル・クライトンが本作に着想を得たというのも非常に頷ける話です。

また、本作では首長竜として有名なプレシオサウルスも登場します。

プレシオサウルスは海に棲む爬虫類であり、恐竜ではなく現在のトカゲやヘビに近い動物なのですが、同じ時代に生息していたからか、翼竜のプテラノドンなどと一緒に恐竜と一緒くたにされている作品をよく見ます。しかし本作では恐竜とは明確に違う動物として描かれており、デイノニクスやタルボサウルスと同じくらい活躍の場面が描かれています。

まとめ 恐竜パニックホラーとして非常に傑作!

ジュラシック・パークが遺伝子工学の功罪を描いたSFサスペンスの側面が強い一方、本作はイギリスの田舎町で起きたパニックホラーとしての側面が非常に読み応えある作品でした。

恐竜が出てくるパニックホラー作品は数あれど、どれも適当な理由で恐竜が蘇り、適当な理由でやっつけられてめでたしめでたし…と、お粗末な怪獣として扱われているものばかりでした。しかし本作は、当時の学説に基づいた、非常に正確な恐竜描写が描かれており、刊行から二十年以上経過した今でも色褪せない傑作だと思いました。

恐竜好きな方、ジュラシック・パークのルーツに触れてみたい方は、是非おすすめな小説です。

そういえば『恐竜クライシス』というタイトルですが、やっぱりプレイステーションで発売したゲーム『ディノクライシス』の元ネタなんでしょうか。今でもリメイクを待ち望んでいるゲームなので、バイオハザードのリメイクの流れに乗ってぜひ、カプコンさんには頑張ってもらいたいところ!

 

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